
「小さい頃は、むしろ“いい子”だったんです。
言えばちゃんとやるし、我慢もできるし、親の期待に応えようと頑張っていました。
――でも、今では何か気に入らないことがあれば、怒鳴る・暴れる・物を壊す。
スマホを取り上げれば激高し、課金を止めれば財布を探す。
まるで、家庭の空気そのものがこの子に支配されているようです。」
私たちの元には、こうした相談が絶えません。
表面的には「暴力」や「ゲーム依存」「課金トラブル」などに見えるものの、
その根っこにあるのは、“わがまま”が家庭のルールになってしまった構造です。
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“いい子”が反転して、わがまま放題になるまで
「小さい頃から少しわがままだった」ではなく、
「小さい頃は“いい子”だったのに」というケースは非常に多く見られます。
• 親に迷惑をかけないようにと気を遣う
• 甘えたいのに、我慢することが当たり前になっていた
• “言うことを聞く=愛される”と信じて育った
でも、思春期を迎える頃、ふとしたきっかけで限界を越えたとき、
それまで抑え込んでいた感情が一気にあふれ出すのです。
そしてそれが、「怒る」「わめく」「暴れる」「お金を盗る」というかたちで爆発する――
“いい子”が反転して、“支配する子”になる瞬間です。
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わがままが“前提”になったとき、家庭の主導権は逆転する
• 「今日は学校に行きたくない」
• 「今は片付けたくない」
• 「まだゲームしてたい」
そう言う子に、親が「今日だけは…」「あと少しだけなら…」と譲ることはあります。
でもそれが繰り返されると、子どもにとって*「“やりたくないことはやらなくていい”」が当たり前になり、
「押せば通る」という認識が強化されていきます。
やがて、泣く・怒る・脅すといった手段を使い、
家庭内のルールや大人の対応をねじ曲げるようになる。
そうして、親が主導権を失い、子どもが主のように振る舞う家庭が出来上がっていくのです。
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「怒る」「無視する」「脅す」で親を操作する構造
現場で見られるのは、感情を使って親を動かす子どもの姿です。
• 暴れて物に当たれば親が折れる
• 無視を続ければ「話せるようになるまで待つしかない」と親が諦める
• 「もう死にたい」「全部壊す」と脅せば、望むものが手に入る
こうした行動が繰り返されるうちに、家庭の力関係は完全に逆転し、“親が子の機嫌に合わせて動く”状態になります。
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なぜここまで“主従”が逆転してしまったのか?
多くの親は、「あの子のために」と心を込めて子育てをしてきたはずです。
• 一人で育ててきた(ワンオペ)
• 過去に不登校などがあり、強く言えなくなった
• 仕事と家庭の両立で心の余裕がなくなっていた
そんな中で、「今日は大目に見よう」「今だけだから」と譲ってきた日々。
でも、その“譲歩”が積み重なって、子どもが「押せば通る」「暴れれば勝ち」という価値観を持ってしまったとしたら――
その時点で家庭の構造は、すでに崩れ始めているのです。
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「叱る」ではなく、「線を引き直す」
ではどうすればよいのか?
まず必要なのは、叱ることではなく、“境界を引き直す”ことです。
• やっていいこと・ダメなことを曖昧にしない
• “行動”と“結果”を一致させる(暴れたらスマホは返らない、など)
• 親がブレない姿勢を貫く(感情で動かない)
最初は強い反発があるかもしれません。
でも、それは「自分のルールが崩された」ことへの反応であって、“本当の自分が否定された”わけではない。
その先に、「安心できる家庭内のルール」が再び築かれていくのです。
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“いい子”が支配者になるまでの過程を止めるには
暴れている子どもが、もともとは「親の言うことをよく聞く子」だった――
これは特別な話ではありません。
“わがままを言えずに我慢してきた子”が、“限界を超えたとき”に家庭を壊し始める。
だからこそ、必要なのは「甘やかすこと」でも「厳しく叱ること」でもなく、
“親としてどう線を引き直すか”という覚悟と行動です。
子どもが壊れる前に。
家庭が壊れてしまう前に。
わがままが“支配”に変わってしまう前に、
もう一度、家の中の主導権を取り戻すタイミングがあるはずです。