
「気づいたときには、カードの請求が数十万円を超えていました。最初は何かの間違いかと――でも、それは全部、息子の課金でした。」
今、家庭で起きている“暴力”は、殴る・蹴るだけではありません。
スマートフォン ・ ゲーム ・ 課金 ・・などなど
目に見えにくい依存の中で、家庭の信頼・お金・関係が静かに壊れていく現状が増えています。
私たちの元には、こうした相談が年々増えています。
今回はその中の一例をご紹介します。
1.家族のクレカで、数十万〜数百万円の課金
ある中学生の男の子。
家ではおとなしく、反抗もあまりない。けれど夜遅くまでスマホを手放さない。
母親がふと見たクレジットカードの明細には、数万円単位のゲーム課金が連日記載されていた…
「家族のスマホに紐づいたApple IDで、勝手に購入していた」
「パスコードを覚えていて、親のいない時間に登録していた」
「『無料だと思ってた』と最初は言い訳をしていたが、途中から明らかに隠していた」
最終的に合計100万円を超える請求に発展した例も、少なくありません。
2.“バレた”ときの反応――逆ギレ・暴言・開き直り
課金が発覚したとき、多くの親は「怒る」というより「動揺」します。
そして多くの子どもは、素直に謝るどころか、逆ギレ・無言・暴言などの反応を見せます。
「そんなに言うならもう学校行かない」
「全部親の金だろ、うるせぇ」
「俺のこと誰もわかってないくせに」
ここで親は、「お金よりも、信頼が壊れた気がした」と語ります。
暴力的な言葉と態度。
スマホを取り上げれば大声で暴れ、暴言が飛び、物を壊すこともある。
こうして“家庭が壊れていく感覚”に、親自身が飲み込まれていくのです。
3.課金依存の正体は、「現実からの逃避」
なぜ子どもはここまでしてゲームに執着するのか・・
その背景には、単なる娯楽ではなく、「現実からの逃避」があります。
• 学校に居場所がない
• 勉強で成果が出ない
• 家族との会話が少ない
• 自信を持てる場所がどこにもない
そんな中、ゲームの中では「勝てる」「認められる」「誰にも邪魔されない」
この感覚が、少しずつ“現実以上に大事な世界”として心を支配していくのです。
4.「やめさせたい」では止まらない現実
多くの親御さんが「スマホを取り上げれば解決する」と考えます。
でも実際には、それだけでは終わりません。
無断でスマホを買い直したり、、、
家族のスマホや財布を探し始めたり、、、
抵抗が激しくなり、手がつけられなくなったり、、、
これは、意志の問題ではなく、すでに依存が進行している状態なのです。
「約束を破る」「繰り返す」「暴力的になる」
こうなってしまってからでは、家庭内だけでの対応は非常に困難です。
5.必要なのは、“物理的な遮断”と“感情の受け止め直し”
こうしたケースで必要なのは、一度デジタルと心理的な距離を取ることです。
• スマホやゲーム機のない生活環境(寮や合宿など)
• 外からの刺激や誘惑を絶ち、生活リズムを整える
• 代替となる“達成感”や“自信”を、体験を通じて育てていく
それと同時に、家庭では「叱る」「問い詰める」だけでなく、
「なぜそうなったのか」を一緒に考える対話が必要です。
壊れた信頼は、叱責では戻りません。
けれど、受け止め直す姿勢から、ゆっくり回復が始まるのです。
まとめ.奪われたのは、子どもの心だった
ゲーム依存と課金トラブルは、金額やスマホの問題ではありません。
それは、「今の自分ではどうにもならない」現実からの脱出手段だったのです。
奪われたのは、お金でも信用でもなく、
「本来の自分で生きる力」や「親子の信頼関係」でした。
その力を、もう一度取り戻すために――
今、子どもを“責める”のではなく、“守るための環境”を整える選択が求められています。